白い巨搭の最終回 権力の果てに財前が見たものは
山崎豊子さん原作、唐沢寿明さん主演ドラマ『白い巨搭』の最終回は衝撃的で、未だにそのシーンを思い出します。
才能あり野心ありの色男、財前助教授が権力の果てに見た世界は一体なんだったんだろう…。虚しさと、そこに残る静かな死、また財前の矜持が凄まじく、単純に涙で終わる作品ではありません。
彼のなりふり構わない上昇志向は新鮮で、こういった主人公のドラマは数少ないんじゃないかしら。だからこそ魅力的です。彼のヒーローじゃないダークな部分を緻密に描ききったところに感服です。
何より唐沢寿明さんの演技が怖い。死を間際にした人間の悲壮、自分が追い求めた権力への矜持、そして生命の尊厳。とにかく与えられたテーマが豊富で、この最終回から感じる思いは人によって全く違うと思います。
財前の愛人役、黒木瞳さんの演技もまた魅力的でしたね。とにかく妖しい雰囲気で正に秘められた関係を共有する愛人、というのがイメージなのですが、最終回は違いました。少女のような純粋さを垣間見るというか、彼女もまた里見と同じく財前の盟友でした。自分のプライドに従った強き女性というのが、最終回の印象ですね。
最後は財前が里見に宛てた手紙を読む形なのですが、『無念だよ』の言葉がここまで重く感じることはありません。そして癌の専門医である自分が癌で死ぬことを恥じる、と…そんな言葉を病床で盟友に書く姿はドラマ内にはありません。
とても想像が働きます。彼は最後までプライドを守りきったのだな、と思います。
とにかく、ただの医療ドラマでなく、人間ドラマ。そして死の前には医者も権力も無力である。最終回はそれを痛感しました。