戦争に勝ってはいけない本当の理由 シモン・ツァバル ブラックジョークと紙一重
日本人は、先の戦争で多くの人が辛い目に遭ったということを、多くの人の体験談を通じて知っています。しかしその体験の多くは「負け戦の辛さ」を語るものです。本書は逆に勝ち戦のデメリットを強調します。
実際、近世以降の戦争のデータをひもとくと、個々の戦闘で勝った陣営の方が、負けた陣営より多くの犠牲者を出していることが分かります。また終戦後に敗戦国を占領し続けるにも多くの人手とエネルギーを費やさなければなりません。現在は国際法を順守する必要から、敗戦国民であっても人道的に扱わなければならないため、むしろ戦闘中にもまして神経を使わなければならない側面もあります。
したがって戦争になったら、いち早く降伏して、相手国に戦勝国として負わなければならない数々の責任を押し付けるのが有効であるとし、その具体的なテクニックを提言していきます。どこまで本気なのかわからない、ブラックジョークのような内容ですが、建国以来、断続的に紛争状態の中で過ごしたイスラエル出身の著者が展開する持論には、独特な説得力があります。真正面から平和について考えるのに抵抗がある人には是非おすすめしたい一冊です。