感想・書評「蹇蹇録：陸奥宗光」ネタバレ注意・日清戦争を振り返り、その概要を回想としてまとめた（レビュー）。 #読書

『蹇蹇録』(陸奥宗光):日本の外交史の裏側

日本近代史にその名を轟かせる名外務大臣・陸奥宗光。特に彼の手腕が発揮された事件である日清戦争を振り返り、その概要を回想としてまとめたのが『蹇蹇録』です。文章は古い文語体なので読みやすいわけではありません。しかし、戦争という特異な状態の中で陸奥宗光が何を考え、どのような行動を取ったかが陸奥宗光自身の言葉で語られており、当時の緊迫した空気が伝わってくるようでした。

歴史の教科書では日清戦争・三国干渉などといった出来事は単なるキーワードで済まされてしまいます。しかし、その裏には国家の面子と利権をかけた静かな戦いがあったのです。『蹇蹇録』は外交というものがいかに生々しい人間の争いであるかを考えさせてくれます。難解な本ではありますが、歴史的な史料としてはもちろん、外交に関する史料としても学ぶべき点は多い1冊だと思います。もっと多くの人に読んでもらえるように、現代語訳が出ればいいのにと切に願っています。