『現代語訳・西鶴 好色五人女』(暉峻康隆):命懸けで恋をした女性たち
恋愛小説や恋愛ドラマなど、恋愛は現代の創作テーマの1つです。そして現代の恋愛はハッピーエンドかバッドエンドかの違いはありますが、恋愛をしたからと言って命が奪われるわけではありません。しかし、日本にはかつて勝手に恋愛をすれば罪に問われる時代がありました。
そんな時代に命懸けで恋愛をした五人の女性をモデルにした小説が『好色五人女』です。おなつ清十郎・八百屋お七といった物語は知名度が高く、歌舞伎でも演じられるくらいです。『好色五人女』に登場する女性は自分の恋愛が悲劇に通じることを知りながらも、相手を思うが故に恋愛へと突き進んでいきます。一見、無謀で愚かに見えますが、本来の恋愛とはこういうものであり、今のように年収・職業などで相手を値踏みする方がおかしいのではないでしょうか。文字通り、恋愛に生きて恋愛に死んだ五人の女性たち。その物語からは恋愛の悲劇だけでなく、人を愛することがどういうことなのかを考えさせられます。訳者の暉峻康隆氏の現代語訳も相変わらず見事です。古典文学と恐れずに読んでみてほしいです。